終物語 11話

「忍」おい、汝の度量は認めてやる
          この儂を相手に一歩も引かんその蠻勇はなるほど我があるじ様の
          後輩といった感じじゃわい
          じゃからここは感情的にならず、五百年生きた大人として
          ガキに寛容になってやる
          さっきの発言を取り消すと言うのなら、ここでのやり取りはなかった事
          にしてやっても良い
          謝れ、許してやる
「猿」取り消さない。謝らない。
          何度でも言う。忍ちゃん、きみは會うべきだ。
          初代怪異殺しに會うべきだ。
          四百年がかりで黃泉帰ったかつてのパートナと會わずに済まそうなんて、
          それはよくないことだ。とてもよくないことだ。
          それは正しくない。
「忍」何を言っておるかさっぱりわからんな
         人間の分際で儂に説教をしたいと言うのであれば、
         少しくらい論理立てて喋れ
「猿」論理なんて知るか！
          つべこべ言わず會えばいいだろうが！四百年がかりできみに會うためだけ
          に復(fù)活した男だぞ。どうして會ってやらないんだ！
「忍」じゃからそれはうぬの誤解じゃといっておろうが。
          そんなくだらんエモーショナルな理由ではないわ。
          散った灰が風(fēng)で寄り集まって磁石のように勵起しただけの自然現(xiàn)象じゃ
「猿」誰かが誰かを好きになる気持ちだって自然だろうが！
          誰かがきみを好きな気持ちを否定するな！
「忍」だから。
          わからん奴じゃなあ！
          そういうのではないんじゃって吸血鬼の眷屬は、吸血鬼の主従関係は！
          好き不好きで語るようなものじゃないんじゃ。この、戀愛脳が！
「猿」主従関係は好き不好きではない、
         それをきみは阿良々木先輩の前でも言えるのか
「忍」あのとき我があるじ様に言うたとおりじゃ。
          今の儂にとって眷屬と言える相手はうぬの先輩しかおらぬ
          今のわしには
「猿」忍ちゃんは私が言ってることがわからないと言うけれど、
         私にわからないのはその辺だ
         私が気に入らないのはまさしく、その辺なのだ。
「忍」んん？
「猿」まるで眷屬が一人しかいちゃあいけないみたいな言い方じゃないか
          たとえば忍ちゃんと阿良々木先輩とその初代と三人で仲良くやっていくという
          想定はないのか？
「忍」三人でって
          なんじゃ、仲直りをすればいいと、うぬはぬかすのか
「猿」仲直りするかどうかはどうでもいい…！
　　　もしも忍ちゃんが初代怪異殺しよりも阿良々木先輩を選ぶというのなら
          それでいんだ。それを相手に伝えるのは忍ちゃんじゃなきゃならない
          伊豆湖さんや阿良々木先輩に任せるべきじゃない
「忍」うぬは何もわかっておらん。わしとアヤツとの関係性…
          いや、今現(xiàn)在のわしと我が主様との関係性さえ、うぬは知らないのではないのか？
「猿」確かに知らない。でもわたしにはわかる
          初めての気持ちも
          二番手の気持ちも

(暦：神原にとっては、初代怪異殺しの気持ちの方がわかるのだ。
       純愛のごとき、弊習(xí)の気持ち)

「忍」いまさらアヤツに會ったところでかけてやれる言葉なんぞない
          現(xiàn)実を見ろ猿娘。今やこの街に蔓延する怪異譚そのものとさえ言えるアヤツは、
          専門家の餌食になるしかない
「猿」わかってる！だから！
「忍」だから？だからなおさら會ってやるべきだと？
          あの男はわしを恨んでおるんじゃぞ？會えばわしは殺されるかもしれん。
          妖刀を返せと言っておるらしいが、
          その刀で斬られるのはわしらだけでは済まんかもしれん。それも全部含めて…
「猿」それも全部含めて！會うべきだと言っている！
          だから理屈とかいんだよ！何でみんなそうやって人と會うことを拒むんだ?。?br>          話にならない！誰かと誰かが出會わなきゃ、話にならないだろうが！
          物語にならないだろうが！
          はっきり言えばいいだろう忍ちゃん、怖いって、會うのが怖いって。
          會って話して、感情が亂れるのが嫌だって
          君は、彼に會うことが阿良々木先輩に対する裏切りのように思うから、
          彼と會わずにいるつもりかもしれないが
          それは違うぞ?。烤Y切っているのは、自分自身だ…！
          言えばいいだろう？400年がかりで生き返ってくるような愛情は重いって！
          阿良々木先輩と仲良くやっているところに、いまさら生き返ってこられても困るって！
          お前の気持ちは迷惑だって！
          そのまま死んでればよかったって！
          言えよ！それが言えないんだったら主人だの、主だの口にするな！
          孤高でもなければ高潔でもない！
          君は、ただの人見知りだ！何が主従関係だ！
          君には奴隷を持つ権利も、主人を持つ権利もない！
「忍」…カッ…
「猿」君には、関係を築く権利がない！
「忍」カカッ…
          カカカッ…カカカッ…！
          遺言はそれいいのかぁ？すべてを臺無しにしても、
          うぬの頭をこのまま潰してやりたい気分じゃわい
「猿」やれよ、だったら、わたしは謝らない。
          やって、今度は阿良々木先輩と気まずくなればいい！
          きっと今初代怪異殺しを避けているように、今度は阿良々木先輩を避けるんだろ？
          今、彼を過去の話にしたように、將來阿良々木先輩のことも昔話にすればいい。
          君は1人目を捨てるように、いつか2人目も捨てる！
          1人目に向き合えない君が、2人目に向き合えるわけがない！
          3人目も、4人目も、5人目も、永遠に人と別れ続けろ！
「忍」永遠に…？
「猿」不老不死なんだろ？いつか言ってたよ阿良々木先輩が、
          忍ちゃんがあした死ぬなら、僕の命はあしたまででていいと！だけどきっと、
          君はそんなことは言わないな。言ったとしても、同じことを3人目にも言う、
          4人目にも言う、5人目に言う！いつまでも言い続け
          いつまでも生き続ける…！
「忍」誰もがおのれのように社交的だと思うなよ？
         さっきわしを人見知りとまとめてくれたが、誰に會いたくないという気持ちだって
         自然なものじゃろうが
「猿」それは不自然だ！人と人は合わないことはあっても、會わないことはない！
「忍」わしは人ではない
「猿」かもしれないな。その様子だと
「忍」會ったところで、わしはアヤツに何を言ってやれるわけではないのじゃぞ？
          憎み合って別れ、憎み合って死に別れた関係じゃ。よりを戻すつもりもなけれ ば、
          3人で仲良くやっていくつもりもない。1人目と2人目を並べて語るつもりもない。
          比べること自體、我が主様に失禮じゃと思っておる
「忍」わしと、我が主様が仲良くしておるところを見せ付けて、それで何の意味がある？
          今やあの男に、わしが何の気持ちもないことを見せ付けて
          どんな意味がある？そんな殘酷なことをしろと言うのか？
「猿」ああ…！殘酷なことをしろと言っている。昔の男を傷つけるのが君の仕事だ
          君は人に好かれて、そのうえいいやつでいたいのか？愛されたままで終わりたいのか？
「忍」うぬの言っておることは、風(fēng)化や磨耗させるくらいだったら、
          破壊してしまった方がいいと言っておるようなものじゃぞ？
「猿」言ってるんだ！だから！
「忍」アヤツがわしを恨んで殺そうとしておるのであれば、
          わしはアヤツを殺し返すことになる。それでもいいのか？
「猿」それでもいい！そのときは、憎しみという気持ちに応えてやればいい。
          その思いを斷ち切ってやればいい！だけど謝って許してくれたならそのときは
「忍」そのときだって同じことじゃ。わしを許した直後に、アヤツは専門家に退治される
          それでもいいのか？
「猿」それでもいい…！それでもいい！
「忍」うぬの阿呆は予想通り、あの男がわしを思って復(fù)活したのだとしても、
          わしがその思いに応えることはないぞ？わしがアヤツに會ってできることは、
          こっぴどく、手ひどく振るだけじゃ
          それでもいいのか？
「猿」：それでもいい…！
「忍」わしがアヤツに會って、もしもその思いに応えたくなったらどうする？
          わしがうぬの先輩よりも、初代怪異殺しを選んだらどうする？
          それでもいいのか？
「猿」それでもいい…！
          そのときは、阿良々木先輩ときっぱり別れて、彼と永遠に添い遂げるがいい
「忍」……

暦：(僕は、忍野忍が一対一で負けたのを初めて見た)